誕生日前の話

誕生日の前になると落ち込む。
仕事が忙しければそこまで気にならない。今年はそれなりに暇なので気になってしまう。
そして落ち込むとあの人のアカウントを探す。たった2回しか会わなかった人。きっともう、私のことなんて覚えていない。
写真を見て一目惚れをした。実物はその何倍も素敵で、顔だけでなくスタイルも声も指の形もすべて好きだった。そして、きっとこの人は私の人生をめちゃくちゃにするんだと思った。どんなに振り回されても、ひどい扱いをされても、きっと全部許せてしまうんだろうと。
実際はそこまで親密になることなんてなかった。思いばかりが膨らんでどうにもならなかった。それは仕事を冷静にやる上において邪魔だと思った。
もっと器用だったらよかった。けれど私は強く誰かに何かに惹かれてしまったら、他のことは何にも手につかなくなる。

私も楽器を弾けば良かったのか。歌えば良かったのか。いっそ男の子として生まれて、あなたと友達になれたらよかったな。
初めて満たされてる感じの人を好きになった。だから怖かった。穴を女で埋めようとはしない人。それが普通だ。

ホロスコープを見ていたらよりによって今年の誕生日は月星座が射手座であった(ただし午後から)私の月星座の獅子座と吉角を取ってくれたらいいな、もしくは彼の太陽と吉角を取ってくれればいいなと思ったが関係ないらしい。
あの人に初めて連絡をしたのはたまたま彼の誕生日だった。でも、もうそのSNSのアカウントは消してしまった。そして彼は私の誕生日なんて知るわけがない。
早く忘れろよ。ちゃんと生活できるようにしろよ。

もし生まれ変わるなら、好きな人に好きだと言えるだけの自信があって、愛されることを怖がらない普通の女の子がいい。