たくさん血を流して長く生きる

初潮を迎えたのは14歳の秋だったと思う。
いや、夏だったのだろうか? 少なくとも春でなかったことは確かだ。内面は大人びていると言われることが多かったが、体が小さい私は、そのアンバランスさがとても嫌だった。

高校に入ると生理痛がひどかった。鉛のように重たく鈍い痛みを抱えながら、自転車を漕いで家に帰る。あのとき飲んでいた三角形の痛みどめの錠剤は、まだ売っているんだろうか。高校から家に帰る道は西に向かっていくから、沈んでいく夕陽が綺麗だ。
大好きな椎名林檎はその頃出産をしていた。この痛みもいつかは子供を産むためのものなんだ。
しかし、私は当時から結婚願望がなかった。

22歳で子宮にトラブルを起こして、それから少し経ってピルを飲み始めて、出産していく友人たちの話を聞いていた。付き合った誰とも将来を考えることが出来なかった。

気付いたら私は、妊娠しづらい年になっていたし、誰とも付き合わなくなった。
それでも毎月きちんと血は流れる。体に合うピルが製造中止になってしまい、経済的な負担もバカにならないので、ピルを飲むのはやめてしまった。きっと、高校生のときほど生理痛はひどくない。
しかし、子供を産まないのにこれから何年かは生理が来るんだなぁと考える。なんとなく子宮に謝りたくなる。
仕事から帰る車の中で、ずっと紡いできた命のリレーが、自分の代で止まるんだな、と思った。今の仕事をしながら子供を産んで育てるなんて、絶対に無理だ。いや、その前に相手を探さなくてはいけない。うん、無理だ。

初潮が遅いと長生きする、というネット記事を見ながら、子供も持たず、きっと結婚もせず長生きするんだな、と思った。それならせめて健康でいようと思った。